西暦2030年。日本は世界経済の渦に飲まれ、同時に様々な問題を抱えていた。  医者不足による診療体制の縮小。少子高齢化に伴った介護問題、飲食業や建設業などの人手不足。そして。いつの時代も無くならない刑事事件。  そんな中、当時はまだあまり名が通っていなかったアンドロイド製造会社ribot社は、史上初のチューリングテストをパスしたアンドロイドを開発し、世界に発表した。そのアンドロイドは瞬く間に広がり、家庭だけではなく医療現場や介護施設、あらゆる企業や警察、はたまた軍事にまで起用されることとなる。  ーー人間の暮らしをアンドロイドと共により豊かに  そう話すribot社の創設者、有馬真二はこのアンドロイドをこう名づけた。人々の未来へと繋がるアンドロイド『VOID』と。

2050年10月15日/都内の高層ビル

この時期の夕暮れは早く、あたりはすでに暗くなりはじめていた。雨が降りしきる中、警察のアンドロイドが道を封鎖しているのが見える。ビルの上には報道番組のものだろう。ヘリが音を立てて飛んでいた。  現着した結城たちは水たまりを蹴りながら黄色の封鎖テープをくぐる。そこにはすでに黒田を始めとしたドロ課のメンバーが集まっているようだ。  その中央に居る黒田八代は、ひとりひとりの顔を確認したのち、赤星と青木に目を向ける。 「赤星、青木。イチハとレミはどうした?」 「すみません。ふたりはちょうどメンテナンスに出ていて……本稼動は明日からと聞いてましたから」 「そうか……なら仕方ない。今日はここに居るメンバーのみで向かうしかないだろう。悪いが無駄話をしている時間はない。一日早いが仕事だ」  黒田が端末を操作し、空中にマップが投影される。このビルの物のようだ。 「マル被はこのビルに侵入後、中にいた社員数人を射殺。その後人質を取り、屋上に籠城している。そして目撃情報によれば、立てこもっているのはアンドロイドとかで、我々の任務はそのアンドロイドの捕獲だ」 「複数のアンドロイドが目撃されていることから、複数犯……組織ぐるみの犯行の可能性もある。気を引き締めて行け」 「それとお前達に渡すものがある」  そう言うと、黒田はすぐそばにある人一人が入りそうなほどの大きな箱に手をかける。 「一昔前までは警察官が所持する武器は拳銃が鉄則だった。しかし、最近はより様々な事件犯罪者に対応できるように、個々にあった武器を所持することが義務付けられている」  と言って、彼が箱を開けると、中には真新しい武器が入っていた。刀にショットガン、サブマシンガン、拳銃のようだ。  それぞれ武器を手に取ると不思議と手になじむ感覚がする。 「私と青木はここで全員に指示を出す為、待機。晴、雨、結城、みなも、そして赤星と黄海はこちらの指示を聞きつつ、ビルに潜入しろ。先ほども言ったが、相手は複数犯だ。決して油断するな。必ず2人1組で行動するように。以上だ、時間がない。質問があるものは手短に」 「人質は」 「ここの社員だ。大半は避難できたようだが、中に何人残っているのかは不明だ」 「早速任務開始だ。まず裏口に向かえ。既に何人か他の捜査員が向かっている」  黒田の指示に従い、結城たちはビルへと向かう。

同日 PM5時30分/高層ビル内

裏口へ到着した。扉は空いているようだ。既に捜査員が中に入ったのだろう。端末から黒田の声が聞こえる。 「よし、中に入れ。少し進んだところにエレベーターがある。それに乗れ」  中に入ると、外の騒がしさとは裏腹に異様な静けさが漂っていた。受付の椅子やその横の観葉植物が倒れているのが見える。ここで騒ぎがあったのは確かなようだ。  少し進んだところに指示された通り、エレベーターが設置されていた。エレベーターに乗ればすぐにそれは動き出し、あなたたちをへと上へと運んで行く。

ビル49階

あなたたちは屋上からふたつつ下のフロアにたどり着く。事務的な印象を受ける部屋だ。この部屋も下の階と同様に争ったようなあとが残っており、もう周りには立てこもり犯に襲撃されたのだろう。社員の死体が転がっていた。どの主体も射殺されている。  みなもはビルに入ってから言われずとも録画を開始していた。 「一応、ここは見ておこうか。十朱さんたちはそっちの棚を見てくれる?」 「はいはい先輩先輩質問です! 先輩はなんて言うんですか?」 「ん、ああ、私は結城。こっちはみなも」 「みなもです。よろしくよろしく〜」 「すごい、同系統の匂いがする。でも先輩はアンドロイド。不思議だね」  部屋の隅にある棚の捜索を晴と雨に任せ、結城とみなもは、机を見る。パソコンが置かれていた。特段破損はないようで、電源はつきそうだ。不用心にもロックがかかっていない。今時こんなことがあっていいのだろうか。中を開けば一つのファイルが目に入る。どうやら社員の記録のようだ。

2010年9月×日  最近会社の様子がおかしい。辞めていく社員が多すぎる。上司に聞いたら故郷に帰ったとか転職先を見つけたらしいだとか言ってたが、本当にそうなのか。なんだか嫌な予感がする。

2050年9月×日  今日会社に知らない奴らがやってきた。何でも重要な取引先らしく、社内も心なしかピリピリしている。

2010年10月15日  社長に呼び出されて信じられない話を聞かされた。  こんな話狂っている。本気なのか? もしこれが本当ならこの街は

記録はここで途切れている。自動保存されていたファイルのメモを見る限り、この後すぐに襲撃され、この部屋を離れることになったのだろう。無事に逃げおおせたのか、屋上で人質となっているのか、それとも。  視線を落とせば、床には物が散乱している。誰も彼もが、黙って射殺されているわけではない。争いの跡。その隙間に、青い液体が垂れているのが見えた。 「VOIDの燃料?」 「壊されたのかな?」  人間と同じように、VOIDも抵抗したのだろうか。同じアンドロイドに対して。人間の遺体と同じように、アンドロイドも物言わぬ人形、スクラップに成り果てたものが転がっている。  ふ、とみなもがしゃがみ込んで、その青い液体を口に含んだ。 「……何かわかった?」 「いいえ。VOIDの燃料、ということしかわかりません。機体の燃料は基本的に同一のものとなりますので、個体の識別は難しいですし……特殊なものが使われているわけでもないようです」 「そう。そっちは何かあった?」  棚を調べていたふたりに水を向ける。 「あ、先輩、棚からこんなものを見つけました。ここの資料のようなんですが、文字が潰れていて」

ーー■■■■■について  我が社も■■に関わった■■■■■がついに完成したと報告があった。  従来の■■薬とは似ているが、全く異なる■である。  しかし先方は■■をどうしようというのだろうか。将来■■に使用されるとは言っていたが、こんなものが本当に役に立つのか。そもそもこれはこの国の■に触れるものではないのか。  社長は何を考えているんだ。

「この会社自体も、どうにもきな臭いね。こっちは襲撃直前の社員の記録」 「わあ、なんだかイヤな感じですね。しっかし、俺、パソコン全然わかんないんで、頼りになりますね、先輩方」 「あんたもこれくらいできるでしょ」 「やめてください。俺、全くわかんないんですよ」 「自慢しない。みなも、記録した?」 「はい、マスター」 「じゃあ、上に行きましょう」  階段を上がっていると、微かに発砲音が聞こえてきた。屋上からだろうか。

ビル50階

アンドロイドが先行して上のフロアへ向かう。VOIDの燃料である青い液体は、この奥に続いているようだ。フロアに一歩踏み出そうとしたその時、無線機から青木の声が聞こえる。 「アンドロイドが接近しています。数は四体! みなさん、戦闘態勢に入ってください」  無線に従うように各々武器を構える。数秒もしないうちに、青木の話通り四体のアンドロイドが姿を現した。全身を黒の装甲で包んだ奇妙なアンドロイドだ。頭にはヘルメットのようなものが装着されている。 「ええと、データベースから情報を取得取得しようとしましたが、エラーが発生して何も分かりませんでした」 「私も見たことがない。データベースに繋がりません」 「あー、回路不調かな」 「さっそくお出ましってところか。まあ、新しい武器を試すにはちょうどいいな」  赤星が武器を構えたのに習い、黄海も銃口を黒いアンドロイドに向ける。

system[ 戦闘ラウンド ] 戦闘ラウンド : 0 → 1 拳銃R:結城、雨、黄海