無機質なコンクリートがむき出しとなっている一室で、結城は携帯食料を口にしながら、傍らの携帯端末に寄こされた情報に目を通していた。  警察官としての退職届と制服やら警察手帳やらの一式を課長宛てに送り付け、例の一件の騒ぎに乗じて寮から物を引き上げる。それから、身の回りの整理と組織の長として情報をひととおり確認が取れるまでに半月近くかかってしまった。  破棄されたアンドロイドたちのために動くのは苦痛ではないが、端末から流れてくる広告にふ、と目が留まり、もうすぐ年末だな、と思う。そういえば、街中はすっかりイルミネーションで彩られていた。 「あれ。ユウキ、何してるの?」 「ん、ああ、大したことじゃないよ」  声をかけてきたのは、ほかほかと湯気がしろく立ち上るココアのマグカップを持ったニトだ。双子の姉のリトが呆れた顔をして隣に腰かける。 「アンタ、またそんな食事取ってるワケ? ちゃんと食べなさいよ。体壊しても知らないわよ」 「これくらいなら大丈夫。心配してくれてありがとう」 「べっつに、そういうのじゃないから!」 「ええ? リト~恥ずかしがらなくってもいいんだよ?」 「違うってば!」  お決まりのやり取りをする様に冷めるよ、と一声かけ、結城はふたりの様子を頬をついて見やる。と、頭に先ほどの広告が浮かんできた。 「ニト」 「ん、なに?」 「3センチくらいの箱って作れる?」 「別にいいけど。何に使うの?」 「色々」 「ふうん。素材は?」 「紙か木。箱の中に箱が入っているような引き出しタイプか、持ち手がついてフタを開けるようなタイプにしてほしいんだけど。できる?」 「ボクを誰だと思ってるの? それくらい余裕だよ~!」  頭に浮かんだことを形にすべく、目の前にいる適任者に声をかける。自信満々に胸を叩く様が頼もしい。ニトは器用だから、きっと最適な箱を用意してくれるだろう。 「ありがとう。来週中お願いできる?」 「オッケー! このニト様にお任せあれ!」 「よろしく。できれば同じものが50個欲しいんだけど……」 「はあ!?」  数を言えば、素っ頓狂な声が上がった。やはり箱は難しいだろうか。しかし、できれば同じものであった方が見栄えもするし最後の仕上げもやりやすい。箱の作り自体は単純なものなのだから、一度工程さえ決めてしまえば、ニトの腕ならば量産は面倒なだけで然程難しくはないだろう。 「やっぱり難しい? 50個は難しくても最低25個は欲しくて」 「それ、全部来週中?」 「できれば」 「うーん……25個でいい?」 「ありがとう」 「作りが雑でも文句言わないでよね」 「言わないよ。助かる」  ニトに限って手抜きをしないことはこの短い期間でもわかっている。マッドサイエンティストを自称するが、根は真面目で好奇心旺盛なのだ。 「何するのか知らないけどさ、やるときはちゃんと言ってよね」 「そうそう。ユウキってば無茶ばっかりするんだから」 「ふたりのこと、いつも頼りにしてるんだけどな」 「うむ。ならよし!」 「ちょっとユウキ!?」 「ふふ、よろしく。じゃあ、あたしは先に行くね」 「行ってらっしゃい」 「レオによろしく~」  会話を切り上げて席を立つ。端末をポケットに突っ込み、ひらひらと手を振りながら、携帯食料のゴミを入口近くのゴミ箱に投げ捨てた。さて、これから忙しくなりそうだ。