日本の祝日は増えることはあっても減ることはない。今日は勤労感謝の日。街中を多くの人々が行き交っている。結城はホームセンターの開店時間に合わせ、車でやって来ていた。 開店前にも関わらず広い駐車場も、今日はその多くが埋まっている。混んでいるからこそ、この日を選んで来たわけではあるが、大部分の客のお目当てを購入する予定はなかった。 店に向かって歩き出したところでポケットに突っ込んでいる端末が震え、メッセージの受信を知らせる。開いてみれば、去年拾って以来、自身の所属する組織が変わってもパートナーとして共に活動しているアンドロイドのみなもからだった。 『リョウ〜! ニトからね、なんかいっぱい箱渡されたんだけど、これなに?』 先週の頭に依頼した25個の箱がどうやら完成したらしい。あと一週間もあれば、どうにか上手く行くだろう。そこでふ、とこのメッセージの送り主をどうするか考えなければならないことに気付く。どの道共に活動する時間が長いために何かしている、ということには気付かれるだろうし、それならば最初から本人にどうするか聞いておいたほうがお互いに良いだろう。 『みなも、あたしと一緒にみんなを楽しませるのと、みんなと一緒に楽しみに待つのとどっちがいい?』 『イチマイ噛ませろー!』 『じゃあ、後でお使い頼もうかな』 『出掛ける支度しておく!』 『いや、日曜に一緒に行こう』 『わかった!』 何も話をしてはいないが、本人が楽しそうにしているのがわかる。どうも最近は潜入捜査をする時間がなくなって自由時間が取れるようになったせいか、様々なドラマや映画を見ては、その影響を受けているようだ。 さて、日曜までに何をどれくらい購入すれば良いのかをきっちり決めておかねばなるまい。その前に、今日の目的を果たさなければ。 開店と同時に店内に吸い込まれていく行列を眺めがなら、結城はそこから少しばかり外れたエリアへと足を向ける。青々としたプラスチックの葉を茂らせたものが並んでいるのは圧巻だ。 その中から、そこそこ見栄えするだろうものを選ぶ。箱のサイズは中々大きいが、きっと長い間使うことになるだろうことを思えば、そう悪い買い物でもないはずだ。経理担当には怒られてしまうかもしれないが、自前なのだから文句は言ってくれるな、と思いたいところではある。 「いらっしゃいませ。生木でなくてよろしいのですか? 今ならまだあると思いますが……」 「いえ、これでお願いします」 「失礼しました。お会計はこちらになります……では、こちら貼らせていただきますね」 「お願いします」 「ちょうどお預かりいたします。ありがとうございました」 購入証明の紙を細長い箱にっ貼ってもらい、大きな箱を抱えて車へと戻る。 これから帰ってみなもに説明しつつ、今後の準備をしなければならない。今日は昼前から打ち合わせがある。行動ルートや対象の回収に不備がないかの最終確認と、夜の出動に備えての調整だ。 過去の記録を漁れば、年末に向けて出動は増えていたように思う。確かに、警察として働いていた時も年末はバカが増えることもあって事件も多かったと記憶している。警察からすると、今年から自分も立派にバカの仲間入りとなるだろう。 やたらと大きい箱を車の中になんとか押し込み、結城はハンドルを握った。