街路樹がすっかりとその葉を落としきり、寒々とした太陽が街中を照らす昼下がり、結城とみなもは連れ立って街に繰り出していた。陽が落ちれば美しいイルミネーションが街をきらびやかに照らし出すだろうが、今は木々に黒い電飾のコードが巻き付けられている様を眺めるばかりである。 「ねえねえリョウ〜、今日はどこに行くの?」 「色々」 「そっかあ」 黒いタートルネックにコートを羽織った結城の腕を、セルリアンブルーの少し落ち着いた色合いのカーディガンを緩く羽織り、頭に桜色のリボンをつけたみなもが控えめに引く。にこにこと笑みを浮かべるみなもは、人通りの多い東京の通りを結城の隣で器用に歩いていた。 ふたりがまず最初に立ち寄ったのは文房具屋だ。みなもが買い物かごを手に取るのを見て、結城は店の奥に足を運ぶ。様々な種類の紙が並ぶコーナーで立ち止まり、白い画用紙に色画用紙のセット、様々な色のホイル紙をかごに突っ込んでいく。不思議そうな顔のみなもを連れて店をぐるりと歩き、サインペン一式にクレヨン、ハサミやらのりやら麻紐やら、ひととおり回り終えるとそのままレジへと向かった。 一度の買い物には少々高くついた金額を見るも、結城はそのまま支払いを終える。大きな紙袋に詰めてもらった画用紙を折り曲げないようにみなもが身長に肩からかける。細かい文具類は小さな袋に入れて結城が受け取った。 「これ、折らないように気をつけないと……」 「ん? ああ、まあ多少折れても大丈夫だと思うけど」 「そうなの?」 「たぶん」 「そっかあ」 人混みの中を画用紙を抱えて歩くのは現実的ではないため、一度車に戻り、荷物を置いてから再び街に繰り出す。気を使う紙類から解放されたみなもが大袈裟に腕を回して伸びをした。 「ねえねえリョウ、次は次は?」 「お菓子」 「わーい!」 「この前ニトからもらった箱にふたつ入るサイズにしてね」 「ええ、それちょっと無茶じゃない……? ちっちゃいお菓子ってこと?」 お菓子コーナーを回る、ということにテンションが上がったみなもに、結城からひとつ注文が入った。先日ニトから受け取ったおよそ3cm立方の箱にふたつも入る菓子を探さねばならないようだ。 「そう。個包装になってるやつね」 「でも、ちっちゃいお菓子っていっぱい入ってない?」 「それでいいよ。できれば30個くらい入ってるのがいい」 「あ、わかった! みんなの分ってこと?」 「そう。せっかくだからね。親睦も兼ねて」 みなもが首を傾げるのに、結城が頷く。成り行きで代表になる、と宣言した手前、なるべくメンバーと関わりを持つよう会話の機会をできる限り作るようにはしているものの、長きにわたり組織を率いていた白瀬が急にいなくなってしまったことによる空気感を結城はよくよく実感していた。知らない人間が突然現れたことによる戸惑い、反発、忌避感。組織を抜けることは自由とは言ったものの、彼らに行く場所はない。内部分裂をする前に、どうにかして全員と交流を深める必要があった。 「へへ。楽しみだなあ」 「クリスマス、やらなかった訳じゃないでしょ?」 「んっと、キョウがニトとリトの枕元にプレゼント置いてたよ。後はケーキをみんなで食べてたかな」 「ああ……なるほどね」 みなもの回答がありありと結城の脳裏に浮かぶ。思えば白瀬は、妹である心のサンタクロースも勤め上げていた。彼女への誕生日やらクリスマスやらの相談に乗っていたのは今となっては懐かしい。 「ねえリョウ、」 「何?」 「……ううん。なんでもない」 「そ?」 何かを言いかけたみなもに結城は首を傾げるも、必要になればその時はきちんと口にすると知っている。言葉を飲み込ませたのは良くはないが、買い物の最中にする話でもないのだろう。どこかで話をする場を設けることを頭の片隅にメモし、結城は腕を引くみなもに顔を向けた。 「うん。ほらリョウ、早く行こ!」 「お店は逃げないよ」 「売り切れちゃうかも!」 「その時はその時。そんなに焦らないで、一緒に行こう」 「う……うん」 隣に並べば、みなもが小さく頷いた。そのまま隣に並んで色とりどりの菓子が並ぶ店を歩いていく。来週はいよいよ12月だ。