ふ、と意識が浮上するような感覚がして、リトはぱちりと目を覚ました。隣では片割れのニトが未だくうくうと寝息を立てている。  リトは身体を起こして伸びをし、部屋の隅に目をやった。そこには、きのうレオに渡されたクリスマスツリーの形を模したアドベントカレンダーがある。今日は12月1日。最初の引き出しを開けることができる日だった。 「ん……リト、おはよう……」 「おはよう、ニト」  むずがる声がして、ニトがぼんやりと目を開ける。もぞもぞと丸くなろうとして、何かに気付いたかのようにがばり、と布団から起き上がった。 「カレンダー! リト!」 「そんなに騒がなくてもいいじゃない。朝から元気ね」 「ええ、そんなこと言っちゃってさ。リトだって楽しみで目が覚めちゃったクセに」 「うるさい! ほら、さっさと開けるわよ!」  ベッドランプをつけ、サイドテーブルの上に置いてあるアドベントカレンダーに近づく。引き出しの小さな穴は、ひとり分の指しか入れることはできなさそうだ。 「リト、今日は先に起きたから開けていいよ」 「そう? じゃあ早く起きた方が開けることにする?」 「うう……先に見るのはナシだからね!」 「そんなことしないわよ。一緒に開けるように、って言われたじゃない」 「一応だよ、一応!」 「はいはい……じゃあ、開けるわよ」 「うん」  そう言って、リトはドキドキと高鳴る胸を感じながら、1と書かれた引き出しに指をかけ、そっと手前に引いた。中に入っていたのは、個包装のお菓子がふたつ。サンタクロースがトナカイの曳くソリに乗っている様子が描かれたものだ。 「これ、お菓子かしら?」 「多分。食べていいと思う?」 「これだけ小さければいいんじゃない?」 「じゃあ、食べちゃお……あ、チョコだ」 「ん、おいしい」  早速パッケージを開けてみれば、台形のような形をしたチョコレートがひとつ。ミルクチョコレートのようだ。朝から甘いものを食べるのは頭を働かせるのにちょうどいいかもしれない、なんて考えて、ニトは引き出しを覗き込む。 「毎日こういうのが出てくるのかな……あれ?」 「どうしたの?」 「何か入ってる」 「……『この場所に行け』?」  空になっている引き出しの底が白いのかと思えば、どうやら紙が入っていたようだ。広げてみると、短い指示となぞなぞのような問題が書かれている。問題自体はそう難しいものではない。時間をかけずに解いてみれば答えはヒトミ。 「ヒトミに行けってどういうことかな?」 「とりあえず、ヒトミに聞いてみない?」 「うん。何か知ってるかも」  ふたりは寝巻の上に上着を羽織ってヒトミの部屋を訪れた。

「ヒトミ~、起きてる~?」 「はい。どうしましたか?」 「ねえ、ユウキかレオから何か聞いてない?」 「ええ。二人が来たら一緒に開けるように、と箱を預かっています」  そう言って、ヒトミはニトとリトを部屋に招き入れた。ヒトミはその名の通り緑色の髪をひとつにくくっていて、ニトやリトに対してもいつも丁寧に話す、穏やかな性格の女性型アンドロイドだ。優しく笑って様々なことを教えてくれる彼女に、ニトもリトもよくなついていた。 「これですよ」  その言葉とともに机の上に置かれたのは、赤いリボンがかけられた小さな緑色の箱だ。大きさは10cm四方といったところだろうか。 「わ、プレゼントみたいだね」 「そうですね。どちらが開けますか?」 「うーん……あ! ヒトミが開けなよ。ボクたち、毎日開けるものがあるし。ね、リト」 「ニトにしてはいいこと言うじゃない。そういうことだから、ヒトミ、あなたが開けなさい」 「そうですか? ……ではお言葉に甘えて」  少し嬉しそうな顔をして、ヒトミは赤いリボンをそっとほどいていく。箱自体は厚紙でできた上から蓋をかぶせただけの簡易的なもののようで、そっと蓋を開ければ、色とりどりのパッケージが目に飛び込んできた。 「わあ、かわいいですね」 「ねえニト、これって……」 「みんなの分、よね」  箱いっぱいに入っていたのは、ニトとリトが今朝がた開けた引き出しに入っていたチョコレートのパッケージと同じものだ。描いてある絵柄はほかにも種類があるようだが、中身は同じものだろう。 「あれ、紙が……『ひとりひとつ、みんなに配ること』?」 「ヒトミ、一緒に配りに行こう!」 「そうね! 一緒に行きましょう!」  ニトとリトは、困惑するヒトミの手を取って立ち上がる。思わず出た鼻歌が図らずとも同じ選曲で、顔を見合わせて微笑みあった。今日は朝からみんなでチョコレートを食べよう。今朝ふたりきりですでに食べてしまったのは秘密だ。