ひんやりとした空気が少しばかり緩んだ気がして、ニトはゆっくりと目を覚ます。布団の中にもぞもぞともぐり、眠気がやってこないことに観念をしてそろりと顔を出せば、うっすらとツリーを模したアドベントカレンダーが目に入った。 1日である一番最初の引き出しの中身はチョコレートで、ちょっとした謎解きと合わせてみんなで食べられるように工夫がされていた。 なんだかんだみんなで同じものを食べて笑いあえたのは久しぶりだったような気がする。キョウがいなくなって、街が大変なことになって、みんなで戦って。そこで戻れなくなったヒトたちもたくさんいた。 それは自分たちが自分の意志で決めたことで。でも、残されたボクたちはどうすればいいのかわからなくて、どこか糸がぴん、と張ったような感じと一緒に何かが肩に重くのしかかってくるような感じがずっとあった。 レオが戻って、ユウキが前に立って。どんどん変わっていく感じが怖くて。でもそれはきっと言っちゃいけないことで。こんなこと、リトにも言えなくて。 それが、きのうのチョコレートたった一粒で、みんな甘く溶けたような気がした。久しぶりにみんなの顔をちゃんと見た気がするし、作業の手を止めていろんな話ができた気がする。 「ニト、やっと起きたの?」 「あ、リト。おはよう」 「おはよ。アンタ全然起きないんだもの。そんなに夜更かししたの?」 とりとめのないことを考えていると、部屋の扉が開く音とともにパッと明かりがつけられた。見れば、すっかりと支度を終えたリトが呆れたように立っている。それに間抜けな返事を返せば、少しばかり心配そうに声をかけられた。 「ううん。でも、みんなとあんなに話せたのって久しぶりな気がする」 「……そうね。ユウキに感謝しなくちゃ」 「うん」 リトが落とした言葉が、無機質な部屋に響く。この組織を少しでも良くしようと、ユウキはずっと心を配ってくれているのを知っている。とりわけボクたちのことを気にかけてくれていることも。 「そうだ、リト。今日は何かな?」 「アンタが寝坊するから、アタシは開けるの待ってたんだけど?」 「ごめんごめん」 そんな考えは朝にふさわしくない、と頭を振って、リトに声をかけた。リトは大げさに肩をすくめてツリーの前に陣取る。そうして、そっと引き出しに指をかけた。 「今日は雪だるまね」 引き出しから出てきたのはふたつの白いマシュマロだった。透明なパッケージには、中央の部分に赤いマフラーと顔が印刷されている。 ほかに何かないか、と見れば、今日も謎々のような紙が1枚入っていた。 「『フーコに串を渡せ』……? どういうことかしら?」 「わかんないけど、ひとまず行ってみようよ。フーコ、いると思う?」 「この時間なら洗濯当番かしら」 「よーし、フーコを探して出発進行~!」 ふわふわとした感触のマシュマロを手に握りしてめて、ニトはリトを伴って元気よく歩き出す。ふわふわのマシュマロをみんなで食べて、みんなでふわふわになるのだ。